4.前回・今回と1年半続けて、嬉しかったこと。築けたもの。
渡部:
1年半続けてこられて、嬉しかった、感動したのはどんな時でしたか?
川島さん:
やっぱり逸品にする商品が決まった時ですね。「これで自分のお店の逸品が決まった」という安心感。やっぱり商品が決まるまでは、常に頭から離れないですからね。
加藤さん:
「この商品を逸品として、果たして研究会で通るかな、通らないかな」というね。これが不安ですよ。
渡部:
そうでしょうね。逸品が決まった時、皆さん1人1人の笑顔・表情を見て、私も込み上げてくるものがありまして、とても感動しました。
若井さん:
だから今回でも最初に生み出した逸品をフェアに出すお店は、1店もないからね。うちも3品目だし。
海宝さん:
川島さんのところは写真で、品物じゃなくて技術だから、出そうと思っても何と表現してよいのかわからなかったよね。
川島さん:
最初はね、紹介されている皆も訳がわからなかったみたいですね。
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渡部:
私も毎回研究会に出させてもらっていたので、いつも自分に照らして考えるのですが、ホームページの運営や制作というのも、逸品にするとしたらどう紹介できるか、難しいですね。だからこそ、やりがいがあると思いますが。
若井さん:
技術職はやっぱり難しいよね。でもだからこそ、オリジナルになるんですよ。
海宝さん:
そう。完全なオリジナルにね。
若井さん:
うちのように洋品店だと、問屋さんから仕入れて、それを売るでしょう?もう製品になっているから、「この靴下の中にあさりを混ぜようか」とか、できないわけ。でも、和菓子屋さんや飲食店なら、商品を一から、独自のものが作れるわけだから。
渡部:
そうか。ああ〜。
若井さん:
真剣に聞くなよ!今ちょっと突っ込んで欲しかったのにさあ。(皆:大爆笑)
海宝さん:
俺が一番嬉しかったのはね、一回も逸品研究会に参加したことのない、技術商売の人が去年のプレフェアに来て、「技術商売では逸品は無理だ」と語ったことがありました。その人に対して、今まで中心ではなかったけれども、研究会に出ていた人たちが、僕達よりもきちんと逸品を説明して、説得力のある話を自分からしたのです。
渡部:
皆さんの思いが伝わったということですよね。それに逸品に対して自分なりの定義や思いも、生まれてきますよね。
海宝さん:
そう。研究会を一年続けることで、皆の心の中に逸品の意味とかプレフェアに望む心構えとか、お客様に対する接客の心が、できあがってきたんだなと感じて、それがすごく嬉しかった。それに、自分を痛めつけるようになりましたね。皆が良いと言ったものでも、「いや、考え方が安易だった。もう一度考えてくる」と、取り下げたり。
渡部:
やっぱり、研究会の一瞬一瞬を大切に、学ぼうとか、自分を成長させたいとか、そういう気持ちがあるからでしょうね。もったいないって思うんでしょうね。
海宝さん:
そうでしょうねえ。若井さんが2つ目の商品を発表した時も、「自分が最初に言ったことを通しなさいよ!周りがダサいと言ったって、関係ないじゃない」と。研究会のメンバーの中に、自信とかプライドとか、商品に対して持っている同じ仲間の気持ちがわかる。その気持ちを最大限に生かしてあげられるには、どうしたらいいか、ということが皆お互いに考えるようになってきている。これが、逸品を1年半やってきて、本当によかった、素晴らしいことだなと思えることですよね。
渡部:
皆同じように悩んでいるから、わかるんですね。
若井さん:
だから、この中のコミュニケーションも、前よりぜんぜん違うよ。挨拶や世間話だけじゃなくて、冗談や軽口もたたけるような信頼関係があるよね。
加藤さん:
やっぱり最初はなかなか言えないよねえ。堅かったりすると。
海宝さん:
やっぱり逸品って、相手の家の商品、品揃え、店舗の綺麗・汚い・レイアウトまで、口を出さなきゃいけないわけですよ。そうすると、ぜんぜん知り合っていない人同士がいきなりそんな話を始めたら、普通はけんかになるでしょう?先生からも皆からも、一番言われたくない所を突つかれたりするわけだから。
渡部:
言われたくないこと、あるでしょうね。最初はドーンとこたえるでしょうね。
海宝さん:
そう、そう。だけど、ドーンときて、それでも直して、皆に「あ〜綺麗になったね、すごいね!」て言ってもらえると、言われた方も、言った方も嬉しい。そういったお互いの嬉しさがわかるようになると、こうした良い関係が生まれるのではないかな。
渡部:
一緒に喜べるからですよね。
海宝さん:
そうそう。自分のお店のことのように喜んで、お客さんにも勧めてね。「あの店のじゃがいも、めちゃめちゃうまいよ。そのままふかして食べて見てよ」って。
渡部:
そうですよねえ。私も食べましたけど、やっぱりきちんと伝えられますもんね。実際に逸品の素晴らしさを体験しているから。
若井さん:
そう、皆で決めた商品だから、全部言える。
渡部:
新しいタイプの町おこしともいえるかもしれませんね。しかも、意味がある。
海宝さん:
だと思いますよ。まず自分の店舗を、レイアウト・品揃え・商品構成からセールスの方法まで全部、まとめて見直せる。他のお店を知れる。お互いに、素直に感じたことやアドヴァイスを言える。これは消費者の声と一緒、本当に素晴らしい情報なのです。
渡部:
しかも本当に親身なご意見ですから、なかなかもらえないですからね。
海宝さん:
さらに、逸品をやっている全国30商店街の生の声が聞ける。新たな発見、発想をどんどん取り入れていける。逸品に初めて出る人は、出したい商品があって、参加する。2回目になると、真剣に自分の商品を見つめなおして、1から作っていく。だから次回3回目が正念場で、今後続けられるかの一つのターニングポイントだと思います。
(2/11に開催されたプレフェアでも、太田先生が、「全国でもこれだけ本音を言ってもけんかにならず、活発な研究会ができるところは、珍しいよ」とおっしゃっていました♪)