1.尾出昭二さんの経歴
渡部:
尾出さんはタクシーの運転手さんですが、簡単に自己紹介をお願いします。
尾出さん:
昭和25年生まれ、千葉県の佐倉出身で、今56歳です。子供が2人います。中学は佐倉中で、全校で1,500人はいましたよ。
渡部:
すごいですね。私は小中台中でしたが、当時大きな学校と言われていても1,000人でしたから。高校は千葉敬愛で四街道に通っていたので、佐倉は隣ですね。
尾出さん:
敬愛というと、うちの弟と一緒だねえ。
渡部:
へえ、敬愛も意外とよく聞きますねえ。タクシーはいつからですか?
尾出さん:
タクシーは27歳の時からやってますから、もう30年近いですね。うちのかみさんも、結構長いですよ。25年くらいですね。
渡部:
では若い時に、「将来は2人でタクシーやりたいね」なんて、お話してたんですか?
尾出さん:
いえ、そんなことないですよ。私がタクシーを始めていたので、かみさんも、「タクシーやるかはわからないけど、2種免許でも取ってみようか」と言って取りましてね。ただ、当時は女性ドライバーがとても少なくて、タクシー会社に応募しても「うちは女性は採用していません」と言われてね。今の西岬には、既に女性が1人いて、採用してくれたんです。私は、最初は別の会社でしたから、西岬はかみさんの方が長いんですよ。
渡部:
今の会社の「にしざき」っていうのは、どういう漢字を書くんですか?
尾出さん:
西に岬ですね。
渡部:
あれ?社長、吉田平さんじゃないですか?
尾出さん:
そうですよ。最近社長が変わりましてね。
渡部:
ええ〜。今日はこの後、役員会があるので、この対談を早めにしてもらいましたけど、さっき「役員会に遅れます」って、ちょうど吉田さんに電話したとこなんです。最近、平和交通バスさんのホームページを私が作ったのですが、いつもとてもお世話になっていて。西岬観光は「にしざき」と読むんですね。「にしみさき」だと、ずっと思ってました。
尾出さん:
そうだったんですか。私も平さんとは親しくお話させて頂いてますよ。偶然ですね。私は団地交通でバスを運転したこともあるんですよ。
渡部:
尾出さんはバスも、運転できるんですか?
尾出さん:
できますよ、当然。大型2種免許ですから。2種というと、普通はタクシーとハイヤーですね。ハイヤーはタクシーの貸し切りです。青いプレートに白抜きのナンバーで、通称「営業ナンバー」と言いますけどね。
タクシーを始めたきっかけ
渡部:
へえ、そもそもどうしてタクシーを始めようと思ったんですか?
尾出さん:
元々、2種を持って、トラックを運転していたんですが、違反が積み重なって、免許取り消しになってしまったんです。今度は水商売、クラブでお酒をシェイクしたりして、とても楽しかったのですが、当時かみさんと出会って、将来を考えた時に、水商売じゃ社会保険がないし、子供が生まれたら困ると考えましてね。そこで、水商売やって1年経ったので、今度はバスをやりたくて、また2種免許まで取ったんですが、タクシーの方が手っ取り早くて、一度やってみたいとも思っていたので、タクシーを始めました。
渡部:
じゃあ、タクシーをやって、良かったんですね。
尾出さん:
そうですね。タクシーをやって、色々なお客さんを乗せてね、自分の身になった、身に付いたことがたくさんあります。
渡部:
そうですよね、たくさんの人を乗せてきているでしょうね。
尾出さん:
もう、色々なお客さんがいますよ。良い人もいれば、たちの悪い人もいますしね。ただ大変な商売ですよ。お客さんの言うとおりに動かなきゃいけないのでね。
渡部:
酔っ払いも、いるでしょうしね。
尾出さん:
今から20年前ですか、当時バブルの頃は、お客さんを避けて走っていましたね。改装前の千葉駅は4つタクシー乗り場があって、夜10時過ぎると改札の方まで、お客さんがずらーと並んでたんですよ。だから千葉駅までは、お客さんを避けて走ってましたね。
渡部:
そうか、街中で乗せるってことは、飲んでいる確率が高いわけですね。
尾出さん:
そう。あとは、だいたい街中では、これから水商売に出勤するお姉ちゃん達が多いんですよ。だから近距離ですからね。だから信号待ちがもう、恐怖ですよ。
渡部:
あはは。さすがにドアまで来られちゃったら、乗せざるをえませんもんね?
尾出さん:
そうなんですよ。だから本当に、逃げるというか、避けるのに必死でしたね。
渡部:
あはは。でも駅に行けばお客さんがいてくれるというのは、とても確実で嬉しい状況ですよね。今はどうですか?
尾出さん:
今はバスが深夜でも1時まで走っていますから、タクシーは少し減っていますね。
生活サイクル
渡部:
尾出さんの生活サイクルをお聞きしたいのですが、週休2日ですか?
尾出さん:
西岬観光に入ってからは13年目になりますが、月曜から土曜まで夜仕事で、休みは日曜日だけですね。2週に1回、土曜日も休みです。毎日夜6時から夜中の2時か3時までで、間に1時間休憩が入りますね。
渡部:
それでも8時間ありますから、結構ありますね。
尾出さん:
そうですね、一応時間外になる場合は、残業が3時間まで認められていますね。
渡部:
タクシーは、お客さんを乗せれば乗せるほど、運転手さんの給料も上がるんですか?
尾出さん:
そうですね。タクシーが普通の会社と違うところは、基本給がない所ですよ。
渡部:
え、基本給がないんですか?厳しいですね。じゃあ全部が歩合給なんですか?
尾出さん:
歩合も、社員、アルバイト、あとは年金生活者がやるような形態によって、ノルマやボーナスや、社会保険・厚生年金があるかないかなど、違うんです。一応基本給はありますが、基本は売上で、大部分の給料が決まるんです。
渡部:
そうすると、尾出さんが家に帰るのは、いつも夜2時か3時ですか?
尾出さん:
最近は夜8時か9時に出て、遅い時は朝方4時・5時になりますね。もう疲れちゃってますから、寝るんですけど、日が出てきて、皆が出勤する時間でしょう?だから明るいし、周りの音を拾ってしまって、寝れないですよ。窓を閉めて、カーテンで暗くして、でも夏場は暑いですから大変ですよ。クーラーをして、布団をかぶって寝てますよ。
渡部:
風邪引かないように気をつけないと。やっぱり人間の身体のリズムって、朝起きて夜寝るようにできてるんですよね。それを逆転させるのは、大変なことでしょうね。
尾出さん:
最初はこのサイクルが、本当にきつかったですね。前の会社では、16時間乗務で、3時間休憩で、次の日は休みと、隔勤(1日おき勤務)でしたね。ただ、今も2週に1回、土曜日も休みですけど、30年もやってると、お客さんがたくさんいるでしょう?
渡部:
そうか、最初のうちは走ってお客さんを拾うしかないですけど、今はもうお客さんの方から携帯に電話をくれて、呼んでくれるわけですね。
尾出さん:
そうなんです。結構かかってきますよ。多い時は1日8回くらい電話が来ますよ。だから土曜日でも休めない日もあるんです。
渡部:
すごいですね。大変ですけど、でもその方がいいですよね?
尾出さん:
そうですね、ありがたいですね。