4.川島さんの目指すお米屋さん
渡部:
今日、私がお店に来た時に、「よそで買ったお米があまりおいしくなかったのよ」と言っているお客さんがいました。色々なお客さんがいるとは思うのですが、やっぱり川島さんのお客さんは、普通のお米というよりも、こだわったおいしいお米を探しに来る人が多いのですか?
川島さん:
たしかに、こだわったお米も、置いています。ただ、「よそで買ったのがおいしくなかった」という声も聞きますが、「うちで買ったのがおいしくなかった」ということも、あるんですね。ここで話をちょっと戻しますけど、「おいしくないお米が、なんでおいしくなかったのか?」ということなんです。好みの問題なのか、水加減が違ったのか、保管が悪かったのか。
渡部:
なるほど。良いお米でも、たとえば保管が悪かったらおいしくなさそうですね。
川島さん:
ええ。そこで、それに対してきちんとアドヴァイスできるお店でありたいですよね。たとえばカメラなら、スナップ写真程度で十分なのか、もしくはマニアックな写真を撮りたいのか、お客さんのニーズをしっかりと聞いて、お客さんに合ったカメラを紹介する、これはお米屋さんに限らず、どんな商売にも求められる能力だと思います。
渡部:
まんぺいさんは、お店がカラフルで綺麗ですよね。何ていうか、街を歩いていてよく見かけるお米屋さんは、悪い意味ではなくて、昔の駄菓子屋さんのような感じですよね。
川島さん:
ありがとうございます!でも、自分としては、「もっとレベルを上げなきゃいけないな。これで満足なんて、まだまだできないな」と思っています。店内のディスプレイももちろん、お客さんへの説明の仕方も含めて。同業のお米屋はもちろん、お米以外のお店や他のところでも、色々な発見ができますから、いつも改善のアイデアを探していますね。
渡部:
僕も商売歴がまだ浅いですが、たぶん商売って、「このやりかたを続ければずっとうまくいく」ということはないですから、理念や信念とは違って、やり方の部分は変え続けていくものですよね。でも、色んな新しいこと・変化に挑戦していく中で、自分のレベルが上がっていけば、やり方は変わっても、一流の品質が保てるようになるのでしょうね。
川島さん:
そうですよね。だからいつも新しいことをやらないと。でも、これはうちだけじゃないし、どんなお店でも、皆がやっていることなので、頑張ってやっていきたいですね。
渡部:
その新しいことを求めて、川島さんは去年「いなげ逸品」に出られて、私は川島さんにお会いすることができたんですよね。
川島さん:
そうですね。逸品でお会いしたんですよね。あの時はたまたま「たわわ」という新米が2年目に入ったところで、このお米を定着させたいという思いもあって、参加したんです。この「たわわ」のように、産地が町をあげて、農協をあげて、強力に販売を支援してくれて、ポスターや旗・チラシなども豊富に用意できる体制が整っているところもあれば、何件かの小さなグループだけれど、写真を撮って、自分たちがこういう風にこだわって、お米を作っているということを、文章と写真だけで送ってきてくれるところもあります。ただ、決して派手ではないけれど、自分たちでできることを精一杯やる姿勢に、ものすごい熱意を感じますね。
渡部:
私もホームページのお打ち合わせでいつも感じますが、自分で文章を作ることが大好きという人は稀で、ほとんどの人は文章を作ることが大変な苦痛なんですよね。そこで私みたいな者が、お店の情報をわかりやすく整理して、こだわりや強みを選んで、たくさんの人にそれを伝えるお手伝いができるのはとても嬉しいのですが。だから、その小さなグループの方は、本当にすごいなと思います。
川島さん:
私も産地に行きますし、また生産者の方が私のお店に来てくれて、色々なことを教えてくれたりしていますが、その熱意がすごく伝わってくるだけに、売れた時は胸張って産地に行けるんですが、売れなかった時は申し訳ない気持ちでいっぱいで。
渡部:
なるほど。重み、というかプレッシャーのようなものもあるんですね。
川島さん:
そうですね。
渡部:
でも一緒に取り組んでいるからこその重みですから、それを感じられるということが、とても素晴らしいことです。